NPO法人縁(ゆかり)の想い

障がい者と地域の直通アクセス
「DOOR TO DOOR」
みんなをつなげる

健康で豊かな地域づくり

もっと地域とつながりたい。そのために縁ができること

地域と障がいをもつ方たち地域と障がいをもつ方たち

「地域と障がいをもつ方たちの接点となる居場所をつくりたい」
その想いが縁の活動のはじまりでした。最初に立ち上げたのは、就労継続支援B型「日菜田」。ここでは、利用者さんと地域の方が一緒にお弁当を作って提供する「地域食堂」や「子ども食堂」を実施しました。お年寄りやお子さんがご飯を食べにきて、おしゃべりをしたり宿題をしたり。利用者さんと地域の方が自然につながる「見守りの場」へと成長していきました。

コロナ禍になると、お弁当への需要がさらに高まり、2ヶ月間、地域の方へ無償弁当を提供しました。その活動を通して、利用者さんと地域との距離が縮まり、お互いの理解が深まったと実感しています。

何より私たちが感じたのは、魚崎というこの地域で暮らす人のあたたかさ。
「パン作りを一緒にしたい」という方。
「バイオリンを弾きに来てもいい?」という方。
「私も、もっと手伝いたい」という方。

地域のみなさんのほうから、私たちに歩み寄ってきてくれたのです。こんなあたたかい地域なら、障がいのある方が地域ともっと関わっていける。一緒にできることをもっと増やしたい。そう考えるようになりました。

しかし、これまで私たちが運営してきた事業所では広さが足りず、できることにも限界がありました。もっと広い場所があれば、障がいのある方やお年寄りが一緒にわいわい料理をしたりおしゃべりをしたり、時には地域のイベントを開催したり、つながりはどんどん広がっていくはずです。そんな折、私たちの活動の趣旨に賛同してくださった地主さんが、土地を譲ってくださることに。「そういう場所ができるなら、すごくいいことだと思うよ」と応援してくださいました。この言葉に背中を押され、私たちは多機能型事業所の新設に向けて動き出しました。

一体型だからできる手厚い支援

手厚い支援

新設するのは、グループホームと就労B型が一体化した多機能型事業所。これまで運営してきた事業所の2倍の広さがあり、1階に働く場所、2階に生活する場所、3階に屋上菜園を備えた大型の施設です。

働く場所と暮らす場所を一体化させた事業所は他に例のない、初めての試みです。一体型にする理由は、手厚い支援を行うため。縁では2021年10月現在、魚崎に9ヵ所の事業所をオープンしています。しかし、就労支援とグループホームがバラバラに点在すると支援者の手も分散せざるをえず、なかなか目が行き届きません。支援者にも一体感が生まれにくく、マンパワーを最大限に発揮できないという課題がありました。

これを一体型にすることで、支援者を一カ所に集中させることができ、人数にゆとりが生まれます。目が行き届き、作業の支援でも伝えられることが充実します。そうなれば、今後の仕事の可能性も広がるでしょう。また、作業の支援をした後で生活支援にまわる、という柔軟な対応が可能に。支援者と利用者さんが共に過ごす時間が増えることでお互いへの理解も深まり、楽しい時間や大変な時間を分かち合うことができます。

ここは、これまでの3年間、試行錯誤しながら見えてきた課題を解決する場所になると考えています。

「あたりまえ」に地域で暮らす

地域の方と一緒に働く

最初の事業所である「日菜田」を建てたときから、私たちは一つの目標に向かって進んできました。それは、障がいのある方が、生まれ育った地域に恩返しができる場所を作るということ。

恩返しの一つが、利用者さんの成長ぶりを地域の方にみてもらうこと。縁には、就労B型から一般就労に切り替わった利用者さんが4人います。これは、仕事に対して真面目に、一生懸命取り組んで力を発揮した結果。「今度は自分たちが支援する」と、事業所で支援者として働いてくれています。それは、障がいのある人も「あたりまえ」に、「普通」に地域で一緒に暮らし、一緒に働くことができるという証。地域の方にその姿を見てもらえれば、「一緒に働けるんだ」という新しい発見になると考えています。そうなれば、これから障がいをもって生まれてくる子も、ずっと暮らしやすくなるでしょう。

もう一つが、みなさんに喜んでいただけるよう、質にこだわった食を提供していること。北海道産のブランド小麦を使い1年半の試行錯誤を経て生まれた食パン、自家菜園で手間ひまかけて育てた野菜をたっぷりつかったお弁当。安心・安全でおいしい食を提供し、地域や企業の方から自然に求められる場所でありたいと考えています。

これを具現化するのが、新設する施設の1階にオープンするカフェ。食にも内装にもこだわり、利用者さんが地域の方と一緒に働き、パンづくりをしたりお弁当づくりをしたりして、地域の方に提供します。これまでと違うのは、広いスペースがあるので、働きたいと考えている地域の方にも、もっとたくさん働いていただけること。時には地域の団体がダンスをしたりお茶会をしたりと、イベントができるフリースペースとしても利用できます。

一生涯を安堵の中で終えられる場所に

グループホーム食事グループホーム食事

2階はフロア全体がグループホーム。10室を配備しています。

利用者さんの親御さんは、障がいを抱えたわが子が地域で暮らす難しさを感じ、絶えず不安な想いを抱えておられます。安心して預けられる場所が見つからず、「私がいなくなったらこの子はどうなるの」と最期まで不安を抱えたまま亡くなられた親御さんもいました。もうそんな辛い想いを、誰にもしてほしくありません。生まれ育った地域に住み、働き、生涯をそこで終える。それは利用者さんとその親御さんにとって何よりの安堵であり、夢ではないでしょうか。

現在、日菜田では2つのグループホームを運営しています。共同生活を始めて2年弱、一緒に暮らしてきて改めて感じるのは、利用者さんの成長ぶりです。自分で洗濯や掃除をし、軽い食事を一緒に作る。お風呂の順番も譲り合って決めて、自然と自分たちのルールで暮らしを上手に作りあげているのです。10人という大所帯になる新しい施設でも、同じように楽しく暮らすであろう彼らの姿が目に浮かびます。

また、屋上にも3室の居室とスタッフルームを備えています。利用者さんが感染症などに罹患した際に、他の利用者さんから隔離しながら看ることができます

屋上菜園で農業にチャレンジ

農業体験農業体験

屋上には小さな菜園を作ります。郊外の畑に出向くのではなく、あえて町なかの限られたスペースを活用したのには理由があります。

自然と触れることは、利用者さんの心に安心を生みます。これまでも、他地域の畑をお借りして、農業体験を何度も行ってきました。ところが地域外に一歩出ると、よそからきた私たちを畑に受けいれてもらうことは非常に困難でした。地域の壁が目の前に立ちはだかり、いくつもの畑を転々としました。

そこで、最初にできた事業所「日菜田」に小さな畑を作ることに。ほうれん草や小松菜、トマトなど、さまざまな野菜を栽培しました。収穫した野菜は、支援者のまかないやグループホームでの食事に使うほか、地域の方々に配って食べていただきました。この活動でさらに地域とのつながりが生まれ、「地域に受けれてもらえた」と肌で感じることができました。

屋上菜園を作ったのも同じ理由から。狭い町なかの片隅でもいい。地域の人と一緒に野菜を育て、一緒に食べる。そんなごはん活動を続け、つながりを深めたいのです。

ここからはじまるDOOR to DOOR

障がいのある方もない方も、子どももお年寄りも、企業も団体も、みんながつながる障がいのある方もない方も、子どももお年寄りも、企業も団体も、みんながつながる

私たちをここまで導いてくれたのは、利用者さんのパワーです。例えば、パン工房で働く利用者さんは、チラシを持ってあちこちに営業に出向いてくれます。かかりつけの病院や薬局、兄弟の勤め先、遠くの親戚。自分が知っているありとあらゆる場所で、パンをアピールして契約につなげてきます。しかも、躊躇なくへっちゃらで。彼らの臆さない勇気と奇想天外な発想が、地域や社会とのつながりを広げているのです。

私たちの役目は、彼らにルールを教えることではなく、今何が必要かを彼らから感じ取り、表現すること。今それは、地域と彼らをつなぐ場所をつくること。場所さえあれば、あとは彼らが自分たちで「居場所」を作りあげていくでしょう。

利用者さんがあたりまえに働き、暮らし、親御さんがいつでも顔を出せる場所。地域の方も気軽に参加・利用できる場所。ドアを開ければすぐつながる。障がいのある方もない方も、子どももお年寄りも、企業も団体も、みんながつながる、DOOR to DOORの直通アクセス。そんな新しいあたりまえを、ここ魚崎から実現します。

ご縁のあった神戸市東灘区魚崎地域

神戸市東灘区魚崎を本拠地とするNPO法人縁(ゆかり)は、 地域に暮らすすべての人が主役となる「生涯」を支援するため、平成29年11月に設立しました。
コミュ二ティカフェの運営からスタートし、現在はひとりぐらしの方への宅配弁当や障がいのある方の就労支援、移動支援など障害福祉サービス事業所としても活動しています。さらに、様々なご縁がつながり、令和1年12月にグループホームも開設しました。
こどもたちだけでなく、働くお母さんやお父さんの応援団です。子供たちで繋がったママさん友達や昔からの女性友達のパワフルな発揮力。同じ子育て世代のお父さん、お母さんが一致団結して縁のサポートに、この繋がりが全力でいろんな事に取り組めてると思います。その一つが、担い手不足の農業に取り組み、これからは農業と福祉、農村部と都市部の労働力の循環を考えています。

日菜田Cafe

働きがいを求める若者と
働く機会のマッチング

働く意味、感謝される実感を得たことのない若者たち。持て余すその力は、社会にとっての財産です。ただ、活かし方、活かす場を知らないのです。
彼等には彼等なりの表現がある、不器用で伝わらず、もがき苦しむ次世代達。私は彼等の背中を見てきて、思い続けることを決意しました。彼等の人生を繋ぐ、道をつくる、全てをかけて。福祉という仕事が、農家という仕事が、彼等にとって人生最高の仕事に繋げるという事。彼等を思い、何があっても思いつづけるのだと。繋ぐのだと。
縁で障がいのある方の移動支援に関わったある若者が「はじめて人に感謝された」と言いました。若者らしいはっきりした言葉と笑顔でした。きっと、縁に来なければ生涯移動支援に取り組むことは無かったと思います。働きがいは、自分で見つけるものですが、少しのご縁で見つけやすくなるのではないでしょうか。
福祉や農業、地域活動。担い手の不足や高齢化で、後継者を求める声は全国であがっています。人がいないのではなく、新しいご縁を繋ぐ機会がないのだと思います。縁は若者のたちの力をぜひ社会に地域に活かしていきたいと考えます。縁が存在する本当の値打ちは、ここにあるのです。

近所のおっちゃんおばちゃんが私たちを育ててくれた

今の時代は、こどもたちにとって「ご近所さん」のありがたみを味わえる場面が少なくなっているように感じています。日常からは想像もできないような出来事や犯罪が起きていることを考えると、そうならざるを得ません。 私たちのこどもの頃といえば、回覧板がまわってきたり、家の前の道路に絵を描いたり、かくれんぼをするといった環境でした。中でも、私にとって、地域の方たちが催してくれたクリスマス会や餅つきなどのイベントは楽しい思い出です。
ある時、盆踊り大会で当たったくじの景品が、忘れもしない電子レンジ! あんなに嬉しくて興奮したことはありませんでした。というのも、我が家の家計はとんでもなく大変で、友達を家に呼ぶのもはばかられるほどでした。今でこそ笑って話せるものの、学校に通うための文房具も十分に揃えられない中、筆箱セットや下敷きなどを配ってくれたり、いつも私たちによく接してくれた近所のおっちゃんおばちゃんの印象は今でも鮮明で、全員の名前まで覚えているほどありがたく思っています。

地域に受け入れられるというありがたみ

今から数年前、我が家が新しい家に引越しをした翌日のことです。私たち夫婦は仕事に出てしまい、家の鍵を持たないまま下校してきた娘が家に入れなかったことがありました。そのとき娘は、近所の見知らぬお宅にお願いをして、トイレを借りたというのです。「アイスやお茶をごちそうしてもらって、友達になってきた」と、帰宅した私に楽しそうに話しました。まだご近所に引っ越しの挨拶もできておらず、ぞっとした私は、すぐに菓子折をもって謝りに行きました。話しを聞くと、現役を引退され、地域の自治会長を務められているとのこと。私たちを快く受け入れてくださったことが、本当に本当にありがたく、感謝の気持ちでいっぱいでした。私は、子どものころの記憶がよみがえりました。娘たちにもこうして地域の方に育てていただくありがたさを感じ、活かしてほしいと強く感じたのでした。

障がい者支援

障がいのある方もおじいちゃんおばあちゃんもこどもやその親たちも共に助け合って
生きられる社会にしたい

障害福祉の分野に関わることになった想いをお話しさせてください。
もう何年も前になりますが、当時療養していた主人の母のために、障がい者支援ヘルパーの免許を取得しました。研修先で多くの保護者の方から聞かれた不安の声が、「自分が先立った時、障がいのあるわが子を誰が看取ってくれるのだろう」ということでした。 日本ではまだ、障がいのある方が自立して生きていける確固たる仕組みがありません。お母さんたちの切実な悩みに、何かできないかと、もどかしい思いでした。 この地域では、定年退職をされてもなお、地域住民が安心して暮らせるように、見回りをしてくれる方たちの存在があります。 子どもを持つ親としては、とてもありがたいことです。そのあたたかい存在と、かつて強いジレンマを覚えた障がいのある方への想いとがつながったのです。

障がいのある方もおじいちゃんおばあちゃんも
こどもたちもみんなが分け隔てなく共に過ごせる社会を作りたい

私は障がいのある方、ない方、みんな「一生涯」を背負う生涯者だと思っています。その一生涯を全うするにはステージが必要です。働く場、集い語らう場、ご飯を食べる場、暮らす場、それらがつながりあうことで、そこに集う人々のご縁もさらにつながり、生きがいを実感できる取り組みになると信じています。今の取組みは、ただただ自分自身が、若いときから社会で働き、子どもを育てる中で想い続けてきたことを多くの方のお力をお借りして、素直に「カタチ」にしたあらわれなのです。

最も大切にしていることは「人をつなぐ」こと

NPOにはまったく無知だった私に、いろんな力を持った方が集まりました。「みんなのすべての想いと力で実現させよう」ネットワークがつないだ縁を生かしてできたのが、この団体の由来です。どんなこともあきらめずにった大切さを忘れずに全てに対応できるように。あきらめない。繋ぐ 縁にとってそれは大切な思い。つながりを超えた思い溢れたメンバー縁です。


パン工房日菜田を支えてる大切な場所

障がいのある方が育てた野菜をふんだんに使い、障がいのある方が働くパン工房日菜田。そしてなにより神戸で出会えたママ友。ママ友を超えた暖かい協力者のメンバー縁。ママ友を超え、協力隊として活躍している、かなうものはありませんでした。このご縁があるからこそ、お年寄りの語らい場やこども食堂としても機能し、人のご縁をつなぐ地域の“集会所”が出来たのです。

食を地域に繋げるために
毎週火曜日、つなぐラボさんから食材を提供していただき、就労支援、生活介護のメンバーで作ったお弁当を無償で配食しています。
また地域限定で、国産素材にこだわり、思いが詰まった朝食パンを障がいある人たちと作り、地域の方々のために提供できるように目指しております。
地域のみんなとあたたかい一生涯でありつづけたい。
障がいある人たちとそんな思いを一心に、やりつづけたいと思ってます。

だれもが胸を張って笑顔で暮らせる国に

日本の障害福祉の対応が遅れてることは、アメリカなどの例を見ても明らかですが、神戸市では、障がい者を積極的に受け入れる動きがあります。市の業務の一部に、就労継続支援B型(企業などに就職することが困難な方が、雇用契約を結ばずに働くことができる場所)を導入しようとしています。
私は、障害福祉に携わってきたからこそ、素直に一生懸命に頑張る障がいのある方に生きる光を一緒に持ちたい。私が通わせて頂いてるあるグループホーム。利用者5名、体験者2名が私の気持ちを現実に変えてくれました。このメンバーに出会えて、人にとってどんな出会いでも助け合えるんだと教えてくれました。私はこのグループホームのメンバーさんと生涯暮らす、共にこの世代を生きて行くんだと感じました。みんなとなら、支えるだけではなく、支えられるだけでなく、自ら地域の住人として地域づくりができるんだということを広めていける。全力でそういった環境づくりを進めたいと思ってます。

「パン工房日菜田」の土地・建物を貸してくださった方もご近所のおじいちゃんおばあちゃんです。お話に伺うと、「素晴らしいことや!」と応援してくれました。素直に笑顔があふれました。まだまだはじまったばかり。でも時間はいくらあっても足りません。人生って、長いようで短いものです。次世代に託すみんなの想いをカタチにし、実現していきたいです。そして私達の痕の次世代にも。


みんなだれしも「生涯者」

障がいのある方、お年寄り、こども、学生さん、子育てに奮闘する親御さん、働きざかりのおとなたち。みんなみんな自分だけの一生を生きる生涯者です。その生涯を全うするにはステージが必要です。働く場、集い語らう場、学ぶ場、ご飯を食べる場、暮らす場。それらがつながりあうことでそこに集う人々のご縁もさらにつながり、生きがいを感じることができると信じています。

多くの方のお力をお借りて歩んでいきます。ご縁を感じながら。きっとだれしも生涯者になれるから。

NPO法人縁(ゆかり)代表理事長
竹内加奈子